· 

月刊タイムス2018年11月号 有田 芳生

タイムスの目

楽観論と悲観論が交錯する中で勝利

引き継がれた翁長氏の遺志

「辺野古反対」 の創価学会がなぜ相手候補を応援したのか

有田 芳生

●立憲民主党沖縄県連代表 参議院議員

 【玉城優勢の報にも疑念が】

 10月4日に玉城デニー新知 事が沖縄県庁に登庁しました。 「新時代・沖縄」のはじまり です。最後まで激しい陣地戦 と情報戦でした。沖縄県知事 選挙は、玉城候補が翁長雄志 知事の後継者として、ディス クジョッキーや衆議院議員の 知名度を生かして勝利しまし た。得票は約 39 万票。相手候 補との差は約8万票。沖縄県 知事選挙で最高得票です。

 私は立憲民主党沖縄県連の 代表として、9月 13 日の告示 日から、ほぼ沖縄に滞在した ので、実感としての選挙戦を ふりかえってみます。翁長雄 志知事が闘病の末に無念の最 期を迎えたのが8月8日。選 挙戦はこのときから始まりま した。投票日が9月 30 日です から、まさに短期決戦でした。

 翁長知事を生んだ「オール 沖縄」も政府・与党による切 り崩しで、「かりゆしグルー プ」が脱退。前回は自主投票 だった公明党が佐喜真淳候補 を推薦、さらに前回は候補者 を出した維新も推薦すること

で、「オール沖縄」陣営は追 い込まれつつありました。政 府・与党による県政奪還が現 実的な課題となりました。

 ある世論調査の結果をまず 紹介しましょう。実施日は9 月 16 日。選挙戦が始まって3 日後の調査です。サンプル数 は2500。沖縄の衆議院選 挙区である1区から4区まで がサンプル数500、大票田 である那覇市(1区)は独立 した500サンプルです。

 調査は日曜日に行われまし た。佐喜真候補は県全体で 38 ・4%、那覇市で 35 ・2%、1区で 36 ・0%、2区で 37 ・ 0%、3区で 38 ・5%、4区 で 41 ・0%。玉城候補は県全 体で 50 ・6%、1区で 53 ・3 %、2区で 52 ・3%、3区で49 ・6%、4区で 46 ・1%。 玉城候補が 12 ・2ポイントリ ードです。

 実はどのメディアの調査も 最初から圧倒的に玉城デニー 候補が優勢でした。玉城陣営 には最初から疑心暗鬼が広が っていきます。どこかで操作 された数字ではないのか。「オ ール沖縄」の世論調査も同じ

ような傾向でしたから、楽観 論を引き締めるとともに、選 挙選を通じて陰謀説が払拭で きませんでした。

 創価学会員は調査に応じな い、出口調査でも答えない、 だから実態はわからない。こ れがもっとも理解されやすい 説明でした。NHK内部から の情報で、投票日当日に、玉 城候補勝利は確実で、「当選 確実」と夜9時台に報じると 知らされても、陣営幹部には 「接戦だ」とする認識があっ たぐらいです。根拠のはっき りしない悲観論がずっと続い たのは、2月の名護市長選で 敗北したからでした。

 

【創価学会の猛攻撃に驚愕】

 この選挙では辺野古新基地 建設に反対してきた稲嶺進市 長が3期目を目指していまし た。私は投票日数日前に現地 を訪れ、市役所の幹部や支援 者に会いました。感想は「危 ない」ということに尽きます。 楽観論しかなかったからです。 「前回より票を減らすかもし れないけれど、落ちるはずが ないですよ」。この発言が典型的です。

 楽観論の根拠にはメディア の世論調査がありました。す べて「稲嶺優勢」という結果 が出ていたからです。しかし 3500票ほどの大差で落選。 どこに原因があったのでしょ うか。まず公明党が創価学会 員を期日前投票に徹底して動 員したことです。この出口調 査では稲嶺優勢とする結果が 出ていました。しかし、共同 通信、琉球新報、沖縄タイム スの投票日の出口調査では回 答拒否率が 49 ・7%に上った のです。創価学会員は世論調 査や出口調査に答えない。そ んな判断がなされるようにな った根拠です。

 沖縄県知事選挙で玉城デニ ー優勢とする世論調査と出口 調査を信用できないとする陣 営幹部は、名護市長選での痛 い経験があったのです。これ はメディアも同じでした。優 勢と報じてきたのに、実際は 敗北。ある記者などは知事選 の予測を「玉城惨敗」と公言 していました。そこまででな くとも「最後には佐喜真候補 が逆転するだろう」とする予測を何度も聞きました。

 根拠なき楽観論と、根拠な き悲観論が、最初から最後ま で玉城陣営を覆っていました。 おかしいのは自民党の行った 世論調査です。メディア、野 党、「オール沖縄」の調査は、 すべてが玉城優勢で終始しま した。ところが自民党の調査 だけが、どんどん差を縮めて 行ったのです。沖縄の選挙は、 最終盤の激しさから「3日攻 防」と呼ばれます。最後の3 日間が決定的に重要だという ことです。

 この局面で自民党が内部に 向けて指示を出しました。佐 喜真候補は劣勢だったが、と うとう1・1ポイントまで追 いついたというのです。玉城 デニー陣営もこの文書に引き 締まりました。しかし結果か らいえば、まったく根拠のな い数字だったことは明らかで す。興味深いのは創価学会で す。前回の知事選で公明党は 自主投票だったのですが、こ んどは佐喜真候補を推薦しま した。 「辺野古反対」を政策として 掲げる公明党が、辺野古問題 を語らない、実質的に政府の

方針を支持する佐喜真候補を 支持したのですから、真面目 な創価学会員は困惑したこと でしょう。沖縄での公明党票 は約7万票、それに前回立候 補した維新の約7万票を加え れば、佐喜真優勢と読むのが 普通だったのです。

 ところが選挙戦最終盤で創 価学会幹部に激震が走ります。 ある出口調査で佐喜真優勢と はいえ、玉城候補とほとんど 差がなかったからです。与党 の戦略は期日前投票を最優先 して、投票日前に勝敗を決す るというものでした。期日前 投票で7割ぐらいを固めるは ずだったのです。創価学会幹 部は、このメディアに「数字 は本当か」と確かめたほどで す。

 創価学会には名護市長選挙 でも使った独自の計算式があ ります。NHKから入手した 期日前投票の出口調査結果を 入手して、それに当てはめる と、7900票差で負けてい るとの結果が出ます。それを 沖縄全県で計算したところ、 4ポイント差だとする数字に なりました。そこで創価学会 が全国に指令を発しました。

「沖縄  緊急事態」「断じて逆転へ ‼  全国から猛攻撃 を」とする指示文書です。投 票率にもよりますが、おそら く数万票の差がついていると 判断したのでしょう。創価学 会の選挙責任者である佐藤浩 副会長は、こうした情勢につ いて菅官房長官に報告します。 菅官房長官が夜回りの記者に 弱音を吐いたのはこの直後の ことでした。

 つづく