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月刊タイムス2018年11月号 石井 一

政界の長老

石井 一

元自治大臣が本音で語る

 

北朝鮮問題で日本は孤立!

 核と拉致問題に どう対処するか

長年、超党派の日朝議連会長を務め、 度重なる訪朝で北朝鮮情勢に精通して いる石井一氏に、北朝鮮の核実験やミ サイル発射から、米朝首脳会談、南北 首脳会談と、緊張緩和の動きがみられ る朝鮮半島情勢について話を伺った。 石井氏は北朝鮮との関係修復と早期の 国交回復を熱く語った。 

 

聞き手  香村 啓文 ●本誌主幹

【北の唯一の存在基盤は核】

香村

 先日、南北首脳会談が開かれ、 平壌共同宣言が出されました。石井 さんは、北朝鮮について、どのよう にご覧になっておられますか。

 

石井

 南北は同じ民族、同じ国です からね。言葉も文化も全て同じもの が、全く不本意に 38 度線で分断され ている。以前はベトナムや東西ドイ ツもそうだったが、不幸な事に朝鮮 半島だけが未だに残っている。朝鮮

半島の人々にとっても、北東アジア、 あるいは世界にとっても、大きな平 和の障害になっている。

 誰しも一日も早く対立を解消した いと思うのは、当然なのです。朝鮮 民族の問題と言うよりも、その後ろ

に控えているアメリカと中国、ロシ アの問題でもあります。過去に強国 の支配下にあった、あの半島の二つ に分断された民族の悲劇と言うべき ものです。朝鮮動乱からも既に 50 年 以上経っている。これが和解に向か うのは、当然の事です。

 

香村  

 言ってみれば南北分断は戦後 の冷戦の産物ということですね。冷 戦が終わった後も朝鮮半島では軍事 的緊張が維持されたままになってい る。これを金正恩と文在寅が、各々 の政治的な思惑があるにしろ、緊張 緩和や将来の統一に向かって動いて いるということですか。

 

石井  

 そういうことです。金大中政 権下で南北融和が進んだ。しかしな がら、それに対して足を引っ張って 来たのが、中国・ロシアと、アメリ カのサイドです。それが最近はトラ ンプが金正恩と接触して米朝首脳会 談をやる状態になった。大きく構造 が変化している中に、今回の南北融 和が行われたわけです。やはり南北 の統一は南北朝鮮の民族同士の話し 合いだけでは済まない問題でもあり、 そういう他動的要因も加わって、今日のような形になっている。遅かれ 早かれそうなるべき流れにあるわけ です。

 現在は韓国に駐留する在韓米軍が、38 度線で対峙する北に対する脅威と なっている。その緊張状態を無くし たいという強い願望があるわけだ。 そういう要因の中から韓国の文大統 領と金委員長が接近したということ は、当然の結果であり、日本も含め て周辺国も大いに歓迎すべき事態だ と思う。ただ、まだ多くの障害があ り、簡単には行かない。 50 年経って も氷解していない問題が存在し、こ れに他動的要因も加わり、南北統一に行くまでにはまだ道のりがあるで しょう。特に北朝鮮の核問題が懸念 材料として大きい。しかし、いずれ は朝鮮半島の統一の方向になってく ると思う。 

 

香村

 なるほど。他動的な要因とは、 米中露の大国の論理で南北朝鮮が動 かされてきたわけですね。今回、南 北首脳会談が行われたのは、北朝鮮 の核ミサイル問題がアメリカを刺激 して、トランプ政権の北朝鮮攻撃の 危険性もあり、それ故に南北和解と 緊張緩和の動きも進んだのではない かな、と思われます。 

 

石井

 その通りでしょうね。とは言 え、北朝鮮がただちに核を放棄する とは現実的には考えられない。これ は日本で考えるほど簡単じゃない。 北としては、核が唯一国家の存在基 盤みたいになってしまっている。北 朝鮮と米国の国力を比較すれば、北 朝鮮は米国のGDPの千分の一程度 の国です。そういう国家の首脳が、 世界の政治の檜舞台に対等に上がり、 世界各国が注視してその政治的動向 を見守っている。各国のニュースが 北朝鮮の動向を伝える。なぜそうな るか。北の核兵器、あの火星 15 とか いうICBMを開発して保有した事 実が、アメリカにとっても脅威となったからだ。逆に北朝鮮からすれば、 世界最貧国の国が、世界最強の国と 対等に国際政治の舞台に上れたのは、核の力以外にないのです。北にとっ てはいまや、国家威信の最大の源に なっている。北朝鮮のGDPは世界 最低で、高知県や徳島県と同じレベ ルです。そういう経済力しかない国 家が核を開発するとなれば、国民生 活を犠牲にせざるを得ない。ですか ら、これを放棄するということは考え難い。

 つづく